愚かで不毛なことを………そう思っていただけると、結構うれしい、捻じ曲がった、僕。

筑摩叢書 204
中世哲学の精神

E・ジルソン
服部英次郎訳
筑摩書房
から

引用>>

第一章 キリスト教哲学の問題

 キリスト教哲学という表現ほど、中世哲学の歴史を研究する者の心に自然に浮かぶ表現はない。この表現ほど、問題を起こさないものはないように思われる。したがって、この表現がしばしば用いられているのを見ても、驚くには当たらないだろう。それにもかかわらず、反省してみると、この表現ほど、明確を欠いて、定義しがたいものは少ないのである。じつさい、問題は、中世思想の歴史を研究する者が、中世を通じてキリスト者によって作り上げられた諸哲学を、ユダヤ教徒と回教徒とによって考えられた諸哲学とは別に考察する権利があるかということではない。このような形で提起されると、問題はまったく歴史的な次元のものであって、容易に解決されることができる。権利上、じっさいに結合していたところのものを歴史的研究において孤立させることはできないであろう。周知のように、キリスト教思想、ユダヤ教思想、回教思想はたがいに影響を及ぼしあったのであるから、それらをそれぞれ閉じた孤立的体系として研究することは、けっして正しい方法ではないであろう。しかし、事実上、歴史的研究は抽象を事とするものであって、われわれは、それぞれ、自分の能力の及ぶかぎりを限界とする一つの傾城を画するのである。たいせつなのは、われわれの方法の制限が実在するものの限界であると信じないことである。
 真の問題はこのようなことではなく、哲学的次元のものであって、それよりもはるかに重大なのである。それは、もっとも単純な定式に還元すると、キリスト教哲学という概念そのものが意味をもつか、それに付随して、その概念は実在に対応するかという問題である。問題なのは、もちろん、哲学者であるキリスト者が存在したかということではなく、キリスト教哲学者というものが存在しえたかということである。この意味では、回教徒とユダヤ教徒についても、同じ仕方で問題が提起されるであろう。周知のように、中世文明の特徴は、宗教的要素がひじょうに重要な地位を占めていることである。これまた周知のように、ユダヤ教、回教、キリスト教は、中世において、それぞれ、哲学が宗教的教理とかなりうまく結合してはいるが、しかしスコラ学というまったく明瞭を欠く名称をもってよばれる一団の教説を生み出していた。そして問題は、明確に述べると、これらのスコラ学は、ユダヤ教的なものであろうと、回教的なものであろうと、とくにキリスト教的なものの場合に、哲学という名に値するかということにほかならない。さて、問題がこのような形で提起されるやいなや、キリスト教哲学の存在は、いな、その可能性さえも、明瞭なように見えるどころか、まったく疑わしいものとなるのであって、今日、正反対の立場にある哲学の陣営においても、このキリスト教哲学という表現に積極的な意味をまったく拒否する点で、人びとの意見は一致しているように思われるほどである。
 この表現は、まず第一に、歴史家たちの批判を受けるのであって、かれらは、「キリスト教哲学」というものは存在しうるかいなかという問題を先天的に検討することはなく、中世においてさえも、そのようなものは存在しなかったということを事実として確認するのである*。かれらがいうには、ギリシア思想の切れ端でかなり拙く神学を繕うたものがキリスト教思想家たちのわれわれに残したほとんどすべてなのである。キリスト教思想家たちは、あるいはプラトンから、あるいはアリストテレスから借りて来ているのはまだしも、なおそのうえに、本来不可能である両者の総合を試みて、すでに十二世紀にソールズベリのジョンがいっているように、生前たえず意見の相違していた人たちを死後融和させようと試みるわけである。完全にキリスト教的であると同時に真に創造的であるような思惟の発動はかつて見られたことがない。したがって、キリスト教は人類の哲学的遺産を豊かにすることには少しも寄与しなかったというわけである。

* M・シェーラー『戦争と再建』四一一ページ、E・ブレイエ『哲学史』第一巻四九四ページ以下。

<<引用ここまで。

先に何処からの引用か載せないと、読み飛ばせないでしょ?
この本は、そろそろ返さないといけないので、全文OCRすることにした。
40数年………借りっ放し………
他者(さる大学の図書館です。)の本だから、綺麗ですぅ………
割と簡単に読めてしまう?
あれっ?
何か変………

はははははははははははははははははははは。

固有時との対話で、うるさくて眠れなくなる、僕。

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